[セミナーレポート:第7回Webエンゲージメントセミナー]
待ったなしの企業サイトとスマートフォン連携

 急速な勢いで拡大を続けるスマートフォン市場を前に、多くの企業サイトがスマートフォン対応の検討を急いでいます。企業のWebマーケティング戦略において、今後スマートフォンをどう位置づけ、企業サイトをはじめとしたメディアといかに連携していくべきか。今回で7回目を数えるWebエンゲージメントセミナーは、とりわけ注目度の高いこの旬なテーマで開催。過去最高となる300名を超える参加者を集め、顧客エンゲージメントを深めるためのスマートフォン戦略に迫りました。

重要なのはオウンドサービスとオウンドメディアの両方を作ること



第一部をスティーブ・ジョブズの話題でスタートさせたロフトワーク代表取締役社長の諏訪光洋氏は、「iPhoneやiPadの登場によって“場所”という概念が覆され始めたように、いろんなことがドラスティックに変わりつつあります。今や世界中の20億人がインターネットにつながり、携帯電話の普及率が90%を超えたとの報告もある。東京近郊ではスマートフォンユーザーが60%を超えたそうです。ソーシャルに関する大きなうねりを表すグランズウェルという言葉は、携帯の分野にも言えるでしょう」と指摘。



では、企業は何をしたらよいのでしょうか。その答えは、「コーポレートサイトでも、TwitterやFacebookでもなく、サービス。アプリを作る場合も、商品のプロモーションのためではなく、既存顧客のためのサービスを考えるべき」と諏訪氏。たとえば、2012年の開始を目指すクルマ向けSNS「トヨタフレンド」や、シューズとiPodを連動させてトレーニング管理が行える「Nike+iPod」、iPhoneで支払いができる「Starbucks Card Mobile」などは、そのいい例でしょう。

さらに諏訪氏は、「重要なのは、オウンドメディアとオウンドサービスの両方を作っていくこと。もちろんこれは、BtoCに限らずBtoBでも同じ」とした上で、オウンドサービスに求められる3つのポイントを挙げました。
・蓄積する(顧客の囲い込みができる)
・対話が出来る(顧客との間に信頼関係が生まれる)
・+αのビジネス展開が望める

一方、オウンドメディアは何をすればよいかというと、必要な情報を過不足なく伝えていくこと。具体的には、「次の3つに対応すれば、先々まで安定的に運用していけるでしょう。加えて、今までどおりPDCAを回していくことに変わりはありません」と諏訪氏は説明します。
1. Progressive Enhancement
2. HTML5
3. CMS

最後に諏訪氏は、グローバルなサービス展開が企業の成長を加速するとして、次のようにアドバイス。「オウンドサービスとオウンドメディアが、さらにグローバルにつながると最強です。グローバルであるためには、Openness、Peering、Sharing、Acting Globallyの4つのキーワードが重要で、これらはそれぞれ、炎上リスク、権限、反対勢力、組織体制的な難しさと表裏一体です。特に日本企業が苦手とするところですが、ここをブレークスルーしないと前には進めません。ただし、最初の一歩を小さくスタートすること。これが成功のポイントです」と強調しました。

◆セッション資料

デバイスに応じたコンテンツの出し分けができるシステムが必要



第2部ではNECビッグローブの山本隆範が、同社のスマートフォン・タブレット端末向けサイトの制作事例から、成功のためのヒントを提供。はじめに3社の事例を提示し、その概要を紹介しました。

●NECパーソナルコンピュータ様
スマートフォン・携帯向けサポートサイト「121ウェア」を構築。サイトの特性上FAQへのアクセスが多く、音声案内システムから、該当する症状に対する回答ページをメールで通知する仕組みを実現。電話対応の負荷やコストが削減されている。

●徳島県 上勝町様
NEC製Android端末向けの町民向けポータルサイトを構築。もともと各家庭にセットトップボックスを展開し、テレビで町の情報サイトを観ることができたが、新たにタブレット端末への対応を実現。操作性がよいと利用者にも好評で、CMS導入により情報の更新性と発信力も向上した。

●ベネッセコーポレーション様
進研ゼミの高校講座、中学講座、それに付随する受験生クチコミサイトのスマートフォン・携帯電話サイトを構築。約15万ページのスマートフォン・携帯電話への完全対応がテーマであったため、WebReleaseと独自に設計したテンプレートを使って、コンテンツの払い出しを実現。また、ソーシャルメディア対応を意識し、デバイスに関係なく同一URLになるよう設計した。

山本は、3つの事例から今後のWeb戦略のあり方を展望し、「PCサイトのみという企業は減少していくでしょう。BtoCでもBtoBでも、より多くのタッチポイントを用意する必要がある。そうなると、デバイスの特性に合わせてコンテンツの出し分けができるシステムが必要です」と強調。さらに、Webサイトとスマートフォン連携で気をつけるべきこととして、次の5つのポイントを提示しました。

1.最適なCMSを導入
ワンソース・マルチユースを実現できるか、トーン&マナーをCMSで吸収できるかといったことを考慮して選定。ただし、実現したいことや実現したい機能の明確化に注力。具現化する方法はベンダーに相談すること。
2.デバイスごとの利用シーンやゴールを意識
デバイスによって利用シーンが異なるため、各デバイスに適したコンテンツの出し方、見せ方を考える。
3.アプリとの親和性を意識
スマートフォンサイトは、ソーシャルメディアからの流入がメイン。アプリとの連動による目的達成を考える。
4.端末には割り切って対応
すべての機種・組み合わせへの対応は難しい。標準の組み合わせに対応すれば良しとする。
5.HTML5+CSS3でユーザーにやさしいデザイン
スマートフォンサイトはHTML5で設計。ライブラリをベースに開発するのも有効。

現在NECビッグローブでは、企業の多様なニーズに対応するスマートフォンソリューションを準備中であり、山本は「業務・業態に合ったサービスを適切に選択いただけるようご支援致しますのでお気軽にご相談ください」と締めくくりました。

トリプルメディア時代のWeb戦略 NECの取り組み



毎回ゲストスピーカーが登壇する第三部。第7回は、日本コカ・コーラ株式会社の江端浩人氏です。Webマーケティング戦略において、オウンドメディア、アーンドメディア、ペイドメディアのトリプルメディアに加え、パートナーと一緒に作るシェアードメディアを重視しているという同社。その具体的な施策のひとつが、会員数1千万人以上、年間70億PVを超える会員制ポータルサイト「コカ・コーラ パーク」です。

開発当初から、これを他社との提携プラットフォームとして活用する狙いがあり、過去に実施した日産自動車とのコラボ企画「Coca−Cola×Cube ハッピースフルキャンペーン」では、当初予定の3.5倍もの参加者を記録、日産の新型Cubeは月間販売目標の2倍以上を受注するなど、Win-Winのキャンペーンとして大成功を収めました。

一方で同社は、TwitterやFacebookを活用した企業情報の提供をはじめ、ゲームとのタイアップなどのコンテンツ連携、ブログによるCGM生成、YouTubeでの動画投稿、ニコニコ動画やUSTREAMによる動画中継など、ソーシャルメディアへの取り組みにも積極的です。「ソーシャルメディアを使いたいからスマートフォンという人も増えていますし、ソーシャルメディアの重要性が高まるほど、インターネットのアクセス数も上昇します。こうなると、コカ・コーラ パークのソーシャル化はもちろん、スマートフォン対応も待ったなしでしょう」と江端氏。

ここで江端氏は、同社におけるスマートフォン対応の基本的な考え方を紹介。
・基本理念はPC=携帯=スマートフォン(デバイスに依存しない形でのシームレスな体験を提供する)
・スマートフォンの表示に最適なサイトを作る(専用サイトは作らない)
・デバイス適正を考慮する(スマートフォンならではの特性を活用する際は、流行の理由を分析してから採用する)

さらに今後のスマートフォン対応についても展望し、次の3つの計画を説明しました。
1)さらなるスマートフォンへの対応
・今夏以降作成するサイトは基本対応する
・Flashを使わずhtml5などを活用する
・アプリとタイアップしてユーザーを取り込む
・サイト容量の自社ガイドラインを作成する
2)コーポレートサイト2.0への挑戦
・スマートフォン、携帯電話に全面対応する
・ソーシャル時代にふさわしい企業サイトのあり方を模索する
3)コカ・コーラ パークのソーシャル化(フェーズ2)
・より高度なソーシャルネットワークとの連携
・コカ・コーラ社製品との関係を可視化

「いつでも どこでも 誰にでも のどが渇いたときには、そこにコカ・コーラがある。スマートフォンや携帯電話も、常にいろんな欲求を満たしてくれる存在という意味で、飲料とは非常に相性のいい組み合わせです」と語る江端氏。同社のスマートフォン戦略は、まさに「そこにコカ・コーラがある」を実践するためにあると言えそうです。

◆セッション資料



全セッション終了後は、NECビッグローブの大村剛士をモデレーターに、登壇者によるパネルディスカッションを実施。スマートフォン対応への課題をテーマに意見交換が行われ、実際に幾多のハードルを乗り越えてきたであろうコカ・コーラ社の江端氏には、登壇者からも質問が集中。ほとんどの企業が直面するであろうコスト面での課題については、「余分なコストがかからない工夫はできる。いろんなことが試せるような柔軟性を持たせつつ、なるべく将来的に限界が少ない設計を!」とアドバイスしていました。また、会場からはスマートフォン対応を見据えたCMS選定についての質問も飛び出し、改めて企業が検討すべきことの多さを痛感させられました。




Webエンゲージメントセミナー 今後の開催予定

【第1回】 テーマ:成果を上げるWebインテグレーション ※満員御礼
2010年9月2日(木)
PDCAを適切に回してROIを高めるために、Web担当者がおさえるべき、サイト設計、インフラ、エンゲージメントの成果測定について解説。
【第2回】 テーマ:ソーシャルプラットフォーム ※満員御礼
2010年11月9日(火)
ソーシャルメディアは直接ユーザの声を聞くことができるため、今までのように代理店任せではなく企業側のリードが必須。整備すべきインフラからガイドラインまで紹介。
【第3回】 テーマ:キャンペーン ※満員御礼
2010年12月7日(火)
Web・モバイルのキャンペーンを成功させるための仕掛けと仕組みについて紹介するともに、成果をあげるキャンペーン展開のヒントを探る。
【第4回】 テーマ:Web・ソーシャル戦略をビジネス成果につなげるアクセス解析 ※満員御礼
2011年1月18日(火)
Web戦略の考え方をはじめ、PDCAの回し方(期間・指標など)、効果的なアクセス解析のツール、人員体制などを整理し、2011年におけるWeb・ソーシャル戦略を考える。
【第5回】 テーマ:トリプルメディア時代のWeb戦略 ※満員御礼
2011年2月15日(火)
HTML5、iPadなど、新たなテクノロジーや表現、ツールを活用し、エンゲージメントを高めた事例を紹介し、成功に導いたポイントを分析。
【第6回】 テーマ:ソーシャルメディア時代のファンづくり ※満員御礼
2011年6月7日(火) 開催
ゲスト講師:株式会社ユー・エス・ジェイ 大森研治氏
【第7回】 テーマ:待ったなしの企業サイトとスマートフォン連携 ※満員御礼
2011年8月30日(火) 開催
ゲスト講師:日本コカ・コーラ株式会社  江端浩人氏

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